SOCSYS031: THE 31ST SYMPOSIUM OF TECHNICAL COMMITTEE ON SOCIAL SYSTEMS
PROGRAM FOR MONDAY, MARCH 6TH
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09:00-10:20 Session 2A: ミドル発表 (2a)
Location: 星砂S
09:00
イノベーションのジレンマにおける 「累次的破壊」についての社会シミュレーション分析

ABSTRACT. 市場でトップシェアを誇る既存製品が主要性能の面で劣る破壊的イノベーションにシェアを奪われてしまう「イノベーションのジレンマ」という現象について, 従来理論では性能進化に関して線形モデルを用いて説明されることが通例であった. しかし, 近年「軽量パソコン市場」のような線形モデルでは説明がつかない, 2つ以上の破壊的イノベーションが同時に関わる破壊現象が発生している. 本研究ではこのような現象を「累次的破壊」と定義し, Richard N. Fosterの「技術のSカーブ理論」を用いてモデル化する. またエージェント・ベース・シミュレーションを用いて累次的破壊が発生する状況とそれに対する対策のタイミングの判断基準について分析する.

09:20
マルチエージェントシミュレーションによる観光地の集中回避法に関する研究

ABSTRACT. 020年以降,世界的なCOVID-19の感染拡大の影響で観光業は大きな打撃を受けた.感染拡大が落ち着き,2020年のGo To Travelや2022年の全国旅行支援など観光業促進のための政策が行われた.それらの政策の中で観光庁は感染リスクを避けた新しい旅行のエチケットとして,すいている時期・時間帯を避けた旅行,ソーシャルディスタンスを意識した分散型旅行を推奨している.未だにCOVID-19の感染拡大が続く中,観光地の混雑緩和は重要な課題である.

本研究ではマルチエージェントシミュレーションを用いて,京都府東山区の観光スポットをモデル化し,観光客に混雑情報を与えることで混雑緩和に有効な情報提供は何か,待ち時間や負荷率等の指標について比較検証を行う.

09:40
組織のダブル・ループ学習にフォールトラインが与える影響の分析

ABSTRACT. 組織の長期的な発展においては,ダブル・ループ学習が重要であるとされる.ダブル・ループ学習とは,組織内の個人が持つ知識や価値観を組織内で共有していき,新たな知識や価値観を獲得する活動である.しかし,組織全体への知識や価値観の共有は,組織のグループ化をもたらすフォールトライン(FL)の形成により阻害されてしまうとされている.FLは,組織内で似た属性を持った個人同士が交流しやすくなることで,組織のパフォーマンスに影響を与えることがわかっている.しかし従来研究では,組織内の交流や形成されたFLの動的な変化に焦点を当てられていない.そこで本研究では,組織内の交流により形成さるFLが変化する点に着目し,FLが組織学習に影響を及ぼす動的なメカニズムについて分析する.

10:00
経済社会課題のメカニズム解析と実証分析のための経済プラットフォーム構築

ABSTRACT. 社会経済システムにおける問題を取り扱う上で,従来の研究ではミクロ・マクロ経済モデルによる分析が行われてきた.しかし,複雑な現代社会において提供されるサービスや政策をデザインするためには,個々の意思決定による相互作用が社会全体に及ぼす影響を把握する必要がある.このようなミクロ−マクロをリンクさせた分析手法として,エージェントベースモデルが注目を浴びている.しかし,これまでのエージェントベースモデルによる経済分析は,実データの不十分さと技術的課題から現実に即した分析が困難であった.そこで,本研究ではリアルスケールシミュレーションに適した合成人口データとSOARS Toolkitを用いることで,この課題を解決するプラットフォームを構築することを試みる.

09:00-10:20 Session 2B: ミドル発表 (2b)
Location: 珊瑚
09:00
中華人民共和国の国勢調査を用いた街路単位の人口合成

ABSTRACT. 本研究では,中華人民共和国の世帯単位の人口データを公開されている統計データに基づいて合成する.世帯単位の合成人口データには,世帯の家族構成とともに世帯構成員の年齢,性別の属性が含まれる.中国全国のどの地域でも入手可能な同じ形式の統計データのみを使用し,中国全国の街道単位(居住者数が数万人規模,日本の町単位相当)の世帯単位の人口データを合成する手法を提案し,提案手法の有効性を検証する.

09:20
マルチエージェントシミュレーションによる 千葉県におけるキョン捕獲効果の推定

ABSTRACT. 本研究では,マルチエージェントシミュレーションによって千葉県に生息するキョンの捕獲効果の推定を行う.1章では千葉県におけるキョンによる被害状況など現状の問題点を述べる.2章で関連研究の調査を行い,キョンに関して得られたデータをもとに,3章にてモデルのパラメータ設定を行う.4章では3つの施策シナリオを設定し,仮説の構築を行う.5章では3つの施策シナリオについての実験の結果と考察を行う.本研究の結果として,マルチエージェントシミュレーションによって,捕獲圧をパラメータとして変動させながら捕獲効果をシミュレーションすることで,キョンの頭数を横ばい,減少,駆逐するために必要な捕獲圧を推定することができた.

09:40
離散イベントシミュレーションを用いたモバイルオーダーが店舗運営へもたらす影響分析

ABSTRACT. 「モバイルオーダー」はレジ待ち時間の短縮,人材不足の解消というメリットがある一方で、店舗の混雑をもたらし,客,従業員ともに満足度の低下を引き起こしている側面もある.この課題に対して本研究では,売上高の観点から従業員を増員するアプローチによって,客の満足度や従業員の負担にどのような影響を与えるか,評価・検討を行った.  従業員が業務を兼任し,各業務の対応待ちの数によって仕事を変えていくような店舗を想定し,離散イベントシミュレーションを用いて実験を行った.評価値として,売上高,従業員負担の指標として従業員稼働率,顧客満足度の指標として客の待ち時間をとった. 結果として,モバイルオーダー導入する場合,導入以前よりも従業員を追加することで,利益,顧客満足度,従業員満足度のどの視点からみても,ポジティブな効果が得られることを示した.

10:00
新製品普及のエージェントベースモデルの解剖学

ABSTRACT. マーケティングサイエンスにおける新製品普及モデルは集計データを扱うBassモデルから出発したが,その後エージェントベースモデルが導入されるようになった.その代表格といえるGoldenberg, Libai, Mullerによるモデルに注目し,新製品の採用や潜在的採用者間ネットワークの構造を変えたとき,普及の軌跡や利益の現在価値がどのような影響を受けるかをシミュレーションによって把握する.それを通じて,エージェントベースモデルを用いた普及研究の課題を議論する.

10:40-11:40 Session 3A: ミドル発表 (3a)
Location: 星砂S
10:40
個票データを用いた社会シミュレーションによる高等学校の授業料無償化制度の分析

ABSTRACT. 本研究では,仮想合成人口個票データを用いた多目的最適化社会シミュレーションを行うことで,国が実施する高校無償化に加えて行われる都道府県の授業料補助制度を分析する.家庭の状況によらない教育の機会均等を実現すること,現行制度に存在する格差を是正し,多くの人が納得できる制度にすることの2つを目的とした多目的最適化を行い,シミュレーション結果から制度を分析することで,政策立案の支援を目指す.

11:00
小中高大連携を想定した探究型教材の開発
PRESENTER: 佑太 山崎

ABSTRACT. 平成 30 年の学習指導要領の改訂によって導入された「総合的な探求の時間」は、教科教育では扱わない領域横断人材育成やキャリア教育等の側面を担っている.しかし,カリキュラム・教材の開発を現場に一任しており、現場の各教師が個別に生徒を見極めて実施しているのが現状である.そのため,既存の取り組みでは,小学校から高校にかけて一貫したテーマ性や将来性が不透明であり,生徒の関心が得られないことや開発が教師の負担になっていることが課題として挙げられる.本研究では,このような教育現場の現状の探求活動の取り組みを改善するために,小中高大学間連携を前提とした探究型教材の開発を行い,既存の取り組みと比較した際に多世代間で行われる相互作用が,理想の生徒像の育成に及ぼす影響を検証することを目的とする

11:20
インタラクティブ物語による学習支援コンテンツのデザイン

ABSTRACT. 近年日本では,情報化社会に適応する人材を育成するために,受動的な学習を主体的な学習にし,汎用的な能力を育成させる新たな教育の仕組みが求められている.本研究は,「知識の物語化」と「知識と日常生活のつながりを感じる物語体験」に着目し,学習の能動性を引き出し,あらゆる学びの場で応用できるための支援的な仕組みを提案する.本稿では,教科書を用いた学びと歴史系博物館という社会公共空間を事例に,Arduinoとセンサを利用し,実物のアイテムを用いたインタラクティブ物語を支援的な仕組みとして開発を行った.そのデザインプロセスと結果を報告する.

10:40-11:40 Session 3B: ミドル発表 (3b)
Location: 珊瑚
10:40
異なるネットワーク構造をもつ組織間にいるバウンダリースパナーの分析
PRESENTER: 歩夢 市川

ABSTRACT. 企業組織は持続的な成長のため多様化や国際化しているが,それにより他者間あるいは組織間には隔たり(バウンダリー)が生まれてしまう.これは両者間に違いがあることでもあり,知識移転を困難とさせる.このバウンダリーを越え,他組織間をつなげ,知識移転を促す存在としてバウンダリースパナーが存在する.しかしながら,異なるネットワークに埋め込まれている組織間でのバウンダリー・スパニング活動にはジレンマが生じ,知識移転影響が出てしまう.本社と海外子会社のような異なる組織間の知識移転において,ネットワーク構造がそれぞれ異なる場合,バウンダリースパナー(BS)のどのような特性が,組織のパフォーマンスに影響を与えるかを明らかにする.

11:00
コンピテンシー評価における評価関係者の意見 抽出・集約を可能とする行動様式決定方法の開発

ABSTRACT. 本研究では,企業での導入が進んでいるコンピテンシー評価における行動様式に対する評価関係者の意見を抽出・集約するために,業務の中で起こりうる状況をシナリオ,シナリオに対して期待される行動を行動指標とし,デルファイ法を参考に複数回のアンケートを実施することで決定する方法を開発,実施した.結果として有効性を評価するアンケートにて同意が得られ,現場の意見が取り入れられた具体的なコンピテンシーの行動様式の作成につながったといえる.

11:20
Political Ideology Polarization Analysis under Multilingual Tweet Context

ABSTRACT. The abundance of accessible real-time user information generated from Twitter platform contributes to the utilization in multifarious research domains. Researches detecting Ideologies for Twitter users via Link analysis such as retweet network and follower network show great results in recent years. However, there are difficulties when taking into account the link relations among countries with different language systems, with the fact that people hardly retweet or follow other people when there is a language barrier. In our research, we utilize a multilingual LaBSE model to create U.S. political dimension based on political activists’ user vector embeddings, and project political user vectors from other countries to clarify transnational ideology polarization. We also build classifier to categorize tweets into COVID-19 topics and other topics to verify if the change of topics alters polarization degrees.

13:20-14:20 招待講演 (2)

講演者:岩手県立大学 和川央

演題:Well-beingに着目した公共政策とAIの活用可能性

概要:近年、Well-beingを政策に反映しようという試みが国内外で注目を集めており、最近では企業経営などの民間分野でもその試みが進んでいる。講演では、公共政策の観点から、なぜWell-beingに注目が集まるのか、公共政策が対象とするWell-beingとはどのようなものか、について論じるとともに、研究事例として「Well-beingと政策の関係分析」や「AI技術を活用したWell-beingシミュレーション」について紹介する。

Location: 星砂S
14:30-14:50 特別講演

講演者:株式会社 NTTデータ数理システム データマイニング部 岩本 圭介

演題:データ活用を強力にサポートする、分析プラットフォーム Alkano のご紹介

概要:Alkanoは、簡単かつ直感的なGUI操作でデータ分析、機械学習等を実現できる、データ分析プラットフォームです。豊富なデータ処理、分析機能といったAlkanoの特長を紹介し、デモンストレーションを行います。

Location: 星砂S
15:00-16:40 Session 4: ロング発表 (1)
Location: 星砂S
15:00
形式概念分析による交通事故データ分析について ー自転車事故の分析と形式概念分析のための属性抽出手法ー

ABSTRACT. 交通事故は長年の社会問題とされている.近年情報通信技術の発展にともない,交通事故に関連するデータが蓄積されている.本研究では,富山県警察本部の協力のもと,富山県で過去数年間に発生した交通事故データを分析し,将来の交通事故予測・防止のためのシステム構築を目指す.本論文では,データ分析手法の一種である形式概念分析を用いて,自転車が関連する事故の要因を分析する.また,大量データに対して計算コストが大きい形式概念分析に対し,階層型クラスタリングを用いた効率的なデータ抽出手法を検討する.

15:25
意思決定主体間の関係性に基づくモデル統合による社会システムにおけるマルチスケールモデリングの提案

ABSTRACT. 多様な意思決定主体から階層的に構成される社会システムにおいて,合意形成の複雑化が問題であり多様なステークホルダの意思を反映可能なモデルが求められている.それに対して我々は,社会システムの構成要素に対し時空間スケールに適したモデル化が可能なマルチスケールモデリングに関する研究を行ってきた.本稿では,適切な時空間スケールで意思決定モデルを構築した後に行動規範と社会意識という意思決定主体間の関係性に基づきそれらを統合する手法を提案する.ケーススタディとしてCOVID-19 施策に対して提案手法を適用し,計算機実験によりその有効性を検証する.

15:50
橋梁重要度の定量評価のための交通行動データを用いたマルチエージェントシミュレーションモデルの構築

ABSTRACT. 本研究は,高度経済成長期に整備されて近年急速に老朽化が進行している道路構造物の一つである橋梁を対象として,橋梁の重要度を定量的に評価することで,橋梁管理者が行う維持撤去の判断を支援することを目的とする.マルチエージェントシミュレーションを使用して住民の交通行動を再現したシミュレータを構築し,橋梁がある場合と撤去した場合のシミュレーションを行い,その結果から橋梁の定量的な評価を行う.本研究では,携帯電話端末から得られた交通行動データと焼きなまし法を利用して,住民エージェントの属性ごとのコスト・疲労度に対する価値観を推定し,実際の交通行動に適合した精度の高いシミュレータを開発する.

16:15
群集歩行シミュレーションモデルを用いたエスカレータとホームの混雑に関する研究

ABSTRACT. 本研究ではエスカレータ上での停止または歩行を含む歩行者の行動に関する群集歩行シミュレーションモデルの構築を行う.さらに埼玉県内の実在する駅をモデルとして実験を行い,エスカレータ上での安全性と輸送効率の関係について考察を行う.併せて,エスカレータと階段の最適な利用方法及び設置方法の提案を行う.

17:00-18:15 Session 5: ロング発表 (2)
Location: 星砂S
17:00
投票率低下抑制を目的とした最適化による投票所削減と投票所移動

ABSTRACT. 代表民主制を採用する日本にとって,選挙での投票は国民の意思を政治に反映させることができる重要な機会である.したがって,国民が投票できる環境を構築,維持することが重要である.しかし,現在,厳しい財政環境を理由に投票所数が減少している.本研究では,投票所数や投票所の移動に着目し,投票所と投票率の分析をおこなった.結果として,投票所削減の実験により,投票所数と投票率との関係を示した.また,投票所移動の実験によって,現在の投票所を移動することで投票率を大きく向上できることを示した.また,投票率の上昇が見込める投票所移動先を地図で可視化した.

17:25
機械学習を用いた選挙報道における有用な情報提示方法の考察

ABSTRACT. 近年,国政選挙の投票率が低くなっている.選挙当日に報道される開票特別番組において,当確を早く出すことばかりでなく,政治に興味を引くような,当落理由の提示のような有権者にとって有用な情報が望まれる.本研究では,報道という観点からこの問題へ対処するため,有権者にとって有用な理由を説明変数の組み合わせで重要度の高い順に出力する機械学習の活用を検討した.この際,出力する理由の数や理由を構成する説明変数の数とその有用性の関係が不明である.そこで本研究では,提案する機械学習手法において,この関係について定量的に検証し,重要な理由ほど有用な情報を提示できている傾向を明らかにした.また,政治学で研究されているが新聞記事に含まれないような新規の理由を提示できている割合を調査し,機械学習で理由を出力する有効性を示した.今後は有権者の視点での有用性を,被験者実験を通じて明らかにしていく.

17:50
ソーシャルデジタルツインの設計原理 ―ABMを用いた実世界への介入・構築マネジメントの基本アーキテクチャー

ABSTRACT. 本稿では、自律的エージェントとその相互作用に関する、エージェントベースモデリング(ABM)を、対象の人間活動システムに対するマイクロモデルとした上で、対象の人間活動システムに目的に応じて介入するための、介入マネジメントのための基本枠組みを論じる。本稿ではまずABMを用いた、何らかの目的に基づく人間活動システムへの政策的な介入が、広義の制御サイクルであり、そこではABMに基づいたミクロな内部モデル上で、介入シナリオが事前評価され、その上でシナリオ選択の合意形成、実行管理、結果の評価、評価に基づく制御のフィードバックが行われるプロセスを論じる。さらにそこで用いられるABMの構築法についても事例をベースに論じる。